誰も知らない彼女


☆☆☆

どこかからボソボソと話し声がする。


近くから鳥の鳴き声が聞こえてくる。


今自分がいるのは天国なのかと思ってそっと目を開けると、視界に入ったのは真っ白なカーテン。


あれ?


私は海に飛び込んで水死したはず。


なのになんで私はここにいるの?


疑問を抱いたと同時に、私の近くにいたらしい誰かが嬉しそうな顔で涙を浮かべた。


「あぁ、ようやく目を覚ました……!」


口を両手で覆ってそうつぶやく女性の声を聞いて、重たい目をそちらに向ける。


そこには女性の他に、スーツを着たふたりの男性が立っていた。


そのうち、声を出した女性には見覚えがあった。


「お母さん……?」


「抹里……! あぁ、よかった……!」


蚊の鳴くような声でお母さんの名前をつぶやく私に、お母さんがさらに涙をこぼす。


声を出したのはお母さんだと今わかった。


しかし、お母さんの隣にいるふたりがいったい誰なのかわからない。


目をしばたたかせながら視線を送ると、私の気持ちを察したらしいお母さんが私のほうに近寄った。


「ほら、覚えるでしょ? 抹里のクラスの担任の先生と学年副担任の先生よ」


担任の先生と副担任の先生?


そうか。ふたりの正体がそうなら、私のところにいるのも納得できる。