誰も知らない彼女

そう思う前に自分が狂っていたら別の話だけど。


私は……幹恵に話しかけられる前から狂っていたのかな。


幹恵に羨ましさを感じていたころから、心のコントロールができなくなったのかな。


私の存在価値はいったいあったんだろうか。


ここから飛び降りて水死しても、その疑問はいつまでも私の頭について離れないだろう。


でも、そうなったっていい。


これから私は自分の存在を抹消させるのだから。


やっとで私は自分の本当の気持ちに気づいたみたいだよ。


遅すぎる自覚だけど、これから死のうとするからそんなことは関係ない。


強い風に抵抗して足を前に動かす。


そして、風が私の背中をトンッと押してくれたかのように吹き、私の体が崖から落下した。


さよなら、今までの私。


先に死んだ人たち、今からそっちに行くよ。


そっと目を閉じて体が海に沈むのを待っていると、死ぬ前に見るという走馬灯が見えた。


自分を苦しめていたけど笑っていた日常。


合コンで出会った磐波さんと恋に落ちたとき。


ひさしぶりに会った悠くんと心を開いて会話したとき。


いろいろな思い出が駆けめぐっている。


もう、私は終わりだな……。


つぶっていた目から小さな涙をこぼしたあと、体が海に沈められる感覚に襲われる。


それと同時に、私は意識を手放した。