誰も知らない彼女

どんなに声をかけられても、気づかないフリをしてうつむきながら歩いていく。


そうしているうちに、海が見える崖に到着した。


「寒っ……」


ブワッと吹く冷たい風が肌にチクッと当たり、目をつぶる。


真冬だというのに凍っていない真っ青な海水、そこに落ちて溶けていく雪。


人の命のはかなさを語っているかのようだ。


どんなに派手に暮らしても結局は死ぬ運命にあるのだから、そのために努力する意味はまったくないだろう。


努力することが無意味だとしたら、今までの私の言動はなんだったんだろう。


派手系グループに入らず、マイナーなグループのメンバーとして過ごしてもよかったのかもしれないと思う。


由良と秋帆と同じグループだったのは正直つらかった。


自分の言いたいことは言えないし、ふたりに気を遣わなければならない。


私は無意識のうちに自分の首を絞めて苦しんでいたんだね。


このことにもっと早く気づいていれば、こういう運命にはならなかった可能性が高い。


ねぇ、同じグループのメンバーだったみんな。


今までの私の選択肢は間違っていたのかな。


もしすべて間違いだったら、それらを死でつぐなうことにしよう。


死んだら自分のすべてが終わるのだから。


もう、細かいことで傷ついたり狂ったりしないんだもん。