誰も知らない彼女

「ありがとうございます……」


再び頭を小さくさげたあと、悠くんのお母さんに背を向けてとぼとぼと歩きはじめた。


もういっそのこと、車にひかれて死にたい。


家に向かう途中のときに交通事故で運悪く死んだっていうシナリオがあれば、これ以上失うものはなにもない。


私の大事なものはほとんど殺人事件で失った。


クラスで同じグループのメンバーでネネ以外の全員が連続殺人事件に巻き込まれたか、もしくはその影響を受けて死を選んだ。


えるの場合はまだ病院で寝たきりらしいけど、噂で『あのまま死を迎えるかもしれない』と聞いたので、えるが昏睡状態におちいっているのは間違いないだろう。


一番の友達だった由良と秋帆は、朝丘若葉と名乗っていた幹恵に恨みを持たれて殺された。


幹恵に襲われそうになったときに私を助けてくれた磐波さんは、自分の恋愛の邪魔になるという理由で悠くんに殺された。


そして磐波さんを殺した悠くんは、怒りをためた私に殺され、次々に私の周りを囲う人たちが死んでいった。


こんなに私の周りにいた人たちが死んだのは、狂気に惑わされていたからだろう。


心をむしばむ狂気がだんだんと大きくなっていったことによって、私がたくさんのものを失う結果となった。


『なにがあってもお前だけは絶対に死ぬな』


はげましてくれた磐波さんも。