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すべてがどうでもよくなった。
色にたとえるなら、完璧なモノクロ。
悠くんが死んでから数日後、悠くんの葬儀が終わり、私は歩いて葬儀場をあとにした。
しかし、葬儀場を出てわずか数歩ほどで悠くんのお母さんに引き止められた。
「抹里ちゃん、ごめんね。まさか悠汰が抹里ちゃんに恋愛感情を抱いてたなんて……。気づいてあげられなくて、本当にごめんなさい」
ペコッと丁寧に謝る悠くんのお母さんに、私も小さく頭をさげる。
だが、表情を変えることはしなかった。
別荘の裏山で悠くんと磐波さんが倒れたという情報は私が別荘を出てから漏れて、悠くんの家族が慌てるように凶器と犯人を探しはじめた。
しかし、いくら探しても凶器と犯人は見つからなかった。
当たり前だ。
悠くんを刺した犯人は私だし、凶器に使った折りたたみナイフは私のコートのポケットにしまってあるし。
だけど、警察に自分が殺人犯だと名乗りでることはしなかった。
理由なんてわからない。
考えれば考えるほど、頭が割れるような激痛が走ってくるから。
出頭も自首もしなかった自分のことは、ひとまずスルーしておくことにしよう。
悠くんのお母さんに聞こえないように、ボソッと消え入りそうな声でつぶやいた。
「終わったことをそんな必死になって探ろうとしなくてもいいのに……」



