誰も知らない彼女

私は人を死に追いやったというのに、罪の意識はまったく感じなかった。


これは殺人じゃない。


立派な仇うちのうちに入るだろう。


人間は心臓や首など大事な場所を刃物で刺されるだけで命を落としてしまう。


なんてあっけない生きものだろう。


そうか。だから私はこんなにもめんどくさい生きものだったんだね。


クラスの中で過ごす私の性格が、どうして複雑でめんどくさいのかということが今わかった。


磐波さんが死んだとわかったときに、悠くんをナイフで刺したときに。


と、ここでピタリと笑うのをやめた。


一気に現実に引き戻されたような感覚に襲われ、我に返ったのだ。


私の視界で倒れている悠くんの姿が、いつの間にかいつもの悠くんに見えた。


刺す前までは悪魔に見えた悠くんが、私の知っている悠くんに戻っていた。


嘘だ……。


こんなことになるなら、悠くんを刺さずに済んだのに……。


わなわなと唇を震わせ、ガクンッと膝を枯れ葉につけた。


そんな……。


嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ。


私が悠くんを刺したことで、私は本当の意味でひとりになってしまった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」


そのことに気づいた瞬間、私は頭を抱えて響き渡るくらいに絶叫した。