誰も知らない彼女

私にナイフで刺された気分はどう?


さぁ、早く『ごめんなさい』と謝るがいい!


さらに笑う私に、悠くんは助けが来ないと悟ったらしく、視線を下に向けた。


その直後、悠くんの口から大量の血が出てきた。


反射的に悠くんから離れ、磐波さんの近くまで距離をおく私。


磐波さんと悠くんの血で完全に汚れてしまったナイフを、持ってきた小袋の中にしまい、磐波さんの顔にかけていたコートを裏返しにして着る。


私が着てきたコートはリバーシブルになっており、薄ピンクかベージュかでわけて着ることができるようになっている。


血がついたスカートの上部分が見えないようにコートのボタンをいくつかとめたあと、悠くんが磐波さんの体をクッションにするようにドサッと倒れた。


結局、悠くんは『ごめんなさい』と私に謝ってくれなかった。


まぁいっか。


好きな人の仇うちは成功したんだから、そこは目をつぶっておくことにしよう。


落ち葉や枯れ葉で埋めつくされた裏山。


そこで磐波さんが悠くんに刺されて死に、悠くんは私に刺されて倒れた。


心臓をひと突きだったから、おそらく倒れたあとに絶命しただろう。


「はははっ……!」


わけもわからずに笑う私。


人を殺したのに……。