驚愕の表情を浮かべながらも、今の言葉を頭の中にしっかりメモした。


今、悠くんと磐波さんは一緒にいる。


ふたりがいるのは悠くんの家の別荘の裏山。


なぜふたりがそんなところにいるのかわからないけど、悠くんから呼びだしたのは間違いない。


『ちょっ……バカ! なんで抹里に教えるんだよ! そんなこと言ったら抹里が行きたがるだろうが!』


「わかりました、すぐに行きます!」


一方的に通話を終わらせて、急いで悠くんの別荘の裏山に向かう準備をした。


電話を切る前に悠くんの慌てた声が聞こえたけど、おかまいなしに勢いにまかせて切ったんだ。


まず、スマホは必須。


あとは防寒用のタイツをはいて、薄ピンクのコートを羽織る。


幹恵が死んだときに着ていた格好だけど、さすがに人の格好にふたりは文句を言ったりしないはず。


手袋をはめて、コートのポケットにカイロを無造作に入れた。


ドレッサーの前に立って身だしなみを整え、なにもおかしいところがないかどうかを確認したあと、お母さんへのメモを残す。


【お母さんへ。


今日、急に悠くんに呼ばれたので、悠くんの家の別荘に向かいます。


心配しないで待っていてください。


抹里】


これでお母さんは慌てて私に電話かけたりしないだろう。


こくんとうなずき、鍵を持って家をあとにした。