誰も知らない彼女

ついに幹恵が武器を取りだした。


武器。しかも、それは刃先が鋭くとがった切れ味のよさそうなサバイバルナイフ。


これが私の首や心臓に刺されば、私は即死だ。


たとえ自分の命が削られようとも、せめて私を殺してから死にたいという思いからだろう。


磐波さんと警察の人が来る前に『死ねよ』と言われたから。


私を殺さずに済むのは嫌なんだろう。


でも、私はここで死ぬわけにはいかない。


この事件がきっちりと解決するまでは、私は死なないんだ。


……でも。


もし幹恵が私を殺して気持ちいいと思えるのなら、私は全力で幹恵に立ち向かっていく。


死ぬ勇気があるわけではない。


そんな勇気を持っていなくても、それくらいの度胸を持たなければ、連続殺人事件は終わらない。


冷静に心の中でつぶやく私に気づかず、幹恵がナイフを私に向かって振りおろしてきた。


「死ね……死ねぇ‼︎」


あぁ、私はもう死ぬんだな。


連続殺人事件の犯人がようやくわかったのに、その代わりに自分の命を奪われるなんて。


仕方ないか。


ゆっくりと目を閉じて自分がナイフに刺されるのを待つ。


しかし、その様子を近くから見ていた磐波さんが私の体を自分のもとに引き寄せて、警察官のふたりが幹恵を再び捕らえた。