誰も知らない彼女

なのに、なぜ電話したのが私だと思うんだろう。


疑問に思いながらも磐波さんがいるほうを指さし、警察官ふたりの視界に磐波さんの姿を見せた。


ひとりはじっと磐波さんを見つめ、もうひとりは私を見て不思議そうな表情をする。


「あれ、電話したのが君じゃないなら、なんで君はここにいるの?」


「あ……あそこにいる女の人に襲われそうになったからです」


こういうときにこの言葉がパッとすぐに出てきてよかった。


ほっと胸を撫でおろし、今度は幹恵の姿をもうひとりに見せた。


どうしても逃げたいのか、男の人には力ではかなわないとわかっていても懸命に抵抗している。


それほど、幹恵は警察に捕まりたくないのか。


警察の人が来た以上は、おとなしく捕まったほうが迷惑にならないのに。


他人の迷惑など考えない幹恵の行動に、少しばかりの呆れを覚える。


そんなに抵抗したって、いつかは捕まるからムダに自分の体力が減るだけだよ。


心の中でつぶやいていた言葉が喉の奥までやってきたのを感じたが、すぐに引っ込めた。


「あ、あそこにいるのは……」


「そうです。今までこの街で起きてた連続殺人事件の犯人です」


気づいたときには、警察官の人にスラスラとそうしゃべっていた。


早く捕まえてほしい。


このままの状態で事件を終わらせてほしくないという気持ちで心が焦ったのだろう。