誰も知らない彼女

万が一警察に捕まっても自分が死んでしまっても、自分のおこないを悪いとは思わない。


歩道橋で腕を強く掴まれたとき、私はそう思った。


そう思っても誰かが幹恵を止めなければ、事件は永遠に終わらない。


犯人が幹恵だとわかったまま事件を闇に葬るつもりなら、磐波さんだってここまで言わないだろう。


私だって嫌だよ。


捕まらないまま野放しにしたら、今度狙われるのは絶対に私だから。


自分の邪魔をする人を片っ端から殺していく幹恵を、なんとかして止めなければ。


どうしよう。どうすれば……。


オロオロとすることしかできず、逃げることさえもできない。


正常な判断力が働かない私を尻目に、磐波さんが落ち着いた様子でスマホを取りだして誰かに電話をかけた。


誰にかけてるんだろう。


疑問に思っていたのは幹恵も同じだったようで、不思議そうな顔で磐波さんを見ていた。


なにを話しているのかすらもわからない。


結局、磐波さんがスマホをポケットにしまうまで私と幹恵は口を開かなかった。


怒鳴り声が効いているせいもあってか、かなりピリピリした空気になっていることに我慢できなくなって、思わず声をあげた。


「……磐波さん、誰に電話したんですか?」


「もうすぐ来るから、そのときになったらわかる」