誰も知らない彼女

片方の手で頭を支えて目を見開く。


しかし、若葉の話はまだ続く。


「殺したやつらの中で私を一番傷つけたのは、八戸さんと高島さんね。ふたりはとにかく私を嫌ってて、私の存在をなかったことにしてしゃべったこともあったわね。私をいじめのターゲットにしたのもあのふたり。ふたりには私以上の痛みを味わわせてやろうと思って、今までで一番苦しそうな殺し方をしたわ」


私のグループで仲のいい由良と秋帆。


若葉はそんなふたりを敵ととらえて殺したんだ。


腕を掴む手をはずすのに一生懸命だったのに、なぜか抵抗するのをやめてしまった。


「いやー、ヒヤヒヤしたわ。誰かが犯人を私だって言うんじゃないかって思ったわ。いくら人を殺した経験が前からある私があんな人数を殺したのはひさしぶりだもの」


「……っ⁉︎」


えっ⁉︎


今、なんて……。


ギョッとさらに目を見開いて若葉のほうを見る。


私が驚くことはすでにわかっていたようで、若葉は冷静な対応を見せた。


「こんなの言いたくないけど、榎本さんには教えてもいいかな」


ふっと息を短く吐いて私の腕を離した。


私の表情が戻ったのを見計らい、彼女は再び口を動かした。


「じつは私の本名は朝丘若葉じゃないわ。朝丘若葉は私が最初に殺した女の名前よ」