誰も知らない彼女

「あっ、う、うん……」


自分の疑問に対してなにも言葉を返さなかった私にびっくりしたのか、意外にもあっさりと今の言葉にうなずくネネ。


理由は言えない。


いや、言いたくないと言ったほうが正しい。


喉の奥につっかえている言葉を今ここで出したら、ネネは私の気持ちを尊重して気づかれないように私から離れていくだろう。


もしネネがそうしなくても、自分からそうするつもりだ。


これ以上、私の情けない姿を見せたくない。


残りがあと半分くらいのお茶が入ったマグカップを手に持ち、ネネを置いて自室へと向かう。


呆然としているせいか、ネネは階段を上っていく私を止めることはしない。


でも、そんなことは今はどうでもいい。


私はこれからひとりで生きていくんだ。


もちろん本当にひとりで生きるわけではない。


まだ高校生だし、家族なしでは生きていけない部分がある。


家の中ではいつもの自分で、学校や家以外の場所では嫌われる前に距離をおいてくれないかとお願いするつもり。


階段を上りきり、自室のドアを開けてまたすぐに閉める。


それでもネネはやってこない。


ただ静かに流れる空気だけが感じられる。


「着替える意味あったかな……」


消え入りそうな声でポツリとつぶやいたとき、ひと粒の涙が頬をつたった。