誰も知らない彼女

「……それで、話ってなに?」


ネネのために持ってきたマグカップとは別のマグカップで手をあたためてながら尋ねる。


尋ねた数秒後、ネネは目を伏せてしまった。


家に入れてほしいと頼んだわりには勢いがない。


それほどまでに深刻な問題が起こったのだと言いたいのか。


表情を読み取るのに邪魔なネネの髪の隙間を見つけて表情をうかがうが、髪がカーテンの役割をしているせいでまったく見えない。


「ネネちゃん……?」


小声で名前を呼んでもこっちを向いてくれるわけがない。


だけど、自分のめんどくさい性格がどうしても顔を出してしまい、気づいたらそう言っていた。


もう一度ネネの名前を呼ぼうとしたそのとき。


カーテンの役割をしている髪の毛越しからボソッと声が聞こえてきた。


「こんなこと言ったら抹里ちゃんを悲しませてしまうかもしれないな……」


聴力は昔からいいほうだ。


しかし、今の声ははっきりと聞き取れなかった。


頭上にクエスチョンマークをいくつも浮かべる私をよそに、ゆっくりと顔をあげてうるうるした瞳をこちらに向けたネネ。


悲しみを含ませた瞳だが、よく見るとなにかに対しての怯えをも感じさせた。


なにに対して怯えているかはわからないけど。


「話してもいいかな?」


「う、うん……」