誰も知らない彼女

「わわっ! 抹里ちゃん、こんなところで泣かないでよ! とりあえず中に入れてくれない? ちょうど話がしたかったからさ」


話がしたかった?


てっきりネネは、私が心配で駆けつけてくれたのかと思っていたけど、本当は違うのかな。


だとしたらちょっと悲しい。


来てくれた理由が心配だったからということにしてほしかったけど、人のことを言える立場ではないので口を閉じて黙っておく。


「……話?」


「うん。今後の私たちにとって、とても重要なことなんだ。グループがなくなっちゃうかもしれない事態になってるの!」


ぼんやりしながら首をかしげる私に、私の肩を揺すって焦りを見せるネネ。


どうやらこのままでは済まされない出来事が近くで起こったらしい。


慌てるネネを落ち着かせて、リビングへと通す。


「わぁ……。抹里ちゃんの家、いい香りするね」


「そ、そうかな? 親が好きな柑橘系の香りがするスプレーをしたおかげかも」


「そうなんだ。どうりでいい香りだと思ったよ」


学校に休むと電話する直前に室内用スプレーをかけておいてよかった。


誰かが来るなんて予想してなかったけど、いざというときのために室内用スプレーを1週間に一回はかけている。


このクセを身につけておいてよかったと思った瞬間だ。


マグカップに熱いお茶を注いで、手前側のほうに座っているネネにマグカップを差しだしたところで会話を再開させる。