誰も知らない彼女

外の景色を見ていないのでどんな天気かわからないが、相当風が強く吹いていることがうかがえる。


それがわかるのは、その子の髪が視界をさえぎるくらいに風に吹かれたと知らせるモニターの画面。


髪の長さからして絶対に由良ではない。


私と話す女子で由良以外の女子といえば、ネネしかいない。


風でものすごい勢いで吹かれている髪から覗く顔は、絶対にネネだ。


胸に手を置いて、モニターの送話口に顔を近づけて話しかける。


「……ネネちゃん?」


『あっ、抹里ちゃん……!』


私が話しかけたことに気づいて、我に返って少し顔を近づけるネネ。


誰だかわかるように、視界を邪魔する髪の毛を手でおさえている。


そんなことをしなくても髪の隙間から顔が見えるので、私にとっては必要のない動作だ。


心の中で思っていたことを全力でスルーして、モニター越しのネネに玄関に行くから待っていてと伝えてモニターの電源を切る。


部屋から出ようとしたところであることに気がついた。


しまった、まだパジャマ姿だった。


風邪をひいているのならパジャマ姿のままでもベッドで安静にしていなさいと注意されるかもしれないが、家族以外の誰かにパジャマ姿を見られるのはなんだか恥ずかしい。


クローゼットやタンスから服を何着か引っ張りだし、今の気分で服を選んだ。