でも、今はどうだろう。


クラスメイトのひとりを助けることができずに、クラスで一番の友達を見捨ててしまう姿を見てもなお“優等生”だと思うのだろうか。


もし私が別の立場だったら、その姿をちゃんとした優等生だとは思えない。


唇をキュッと痛いくらいに十分噛みしめたあと、甲斐先生に視線を向けてこう伝えた。


「話がそれますけど、最近この近くで起こってる連続殺人事件……私、その犯人を知ってます」


はっきりとした口調。


だけどそれにしてはどこか震えを感じさせる声。


震えに気づきながらもスルーして、先生の姿をじっと見据える。


案の定、甲斐先生は驚愕の表情を見せた。


ガタンッ!


「ほ、本当?」


「……はい」


またなにかが倒れた音。


体を震わせることなくゆっくり首を上下に動かす。


大きな音がしても微動だにしない自分が怖くなる。


先生が私から距離をおいたのを見計らい、スッと息を吸った。


「連続して起こる殺人事件の犯人は……この学校にいるんです」


「な、なんだって⁉︎」


甲斐先生が目を見開き、勢いよく立ちあがる。


私の言葉に甲斐先生が驚かないわけがない。


連続殺人の犯人がこの学校の中にいると聞かされたら誰もが怯える。


もちろん私だってそうだ。