誰も知らない彼女

絶対に、私は連続殺人事件の犯人じゃない。


「ち、違いますよ。たしかに私のクラスの女子に関わってる人たちが次々に死にましたけど、それだけで犯人を私だと決めつけるのはおかしいです」


誤解だと早く理解してほしいと思っているせいか、早口になってしまった。


焦ってごまかすふうに言う姿を目にしたら、普通は怪しいと思うだろう。


でも私の場合は違う。


早口になったのは自然だし、嘘はひとつもついていない。


次の言葉を待つ私に、甲斐先生はふぅ、と安心したような息をついた。


「……ならいいんだけど。榎本さんが事件の犯人だったらどうしようかと思って……」


どうやら甲斐先生は焦っていたらしい。


私が連続殺人事件の犯人だと思ったのは、彼が焦っていたあまりに考えてしまったことだったのか。


とにかく誤解は解けたみたいなので、ほっと胸を撫でおろす。


ふぅ、と胸に手を置きながら小さく息を吐いたあと、甲斐先生がベッドに座っている私に顔を近づけてきた。


「……っ⁉︎」


その瞬間、磐波さんに唇を触れられたことが頭の中にフラッシュバックしてくる。


相手が違うのに、なんで磐波さんにされたことを思い出してしまうの。


平常心を装って、そっと目をそらす。


「な、なんですか、甲斐先生……」