誰も知らない彼女

だ、ダメじゃん私。


同じ学校の先輩に恋をするのはいいけど、学校の先生に恋をするのはダメだよ。


先生と私が恋に落ちたら、私はきっと学校から追い出される。


そして、学校にいるみんなに会えなくなるんだ。


だけどその“みんな”って誰のこと?


クラスメイト全員? 学校の先生たち? それとも、それ以外の生徒全員?


仮にそれがクラスメイト全員を指しているのなら、いったい誰が私のことを歓迎してくれるのだろう。


ネネは歓迎してくれそうだけど、他はどうかわからない。


一番の親友だった由良のことなんて、今はもうどうでもよくなっている。


もう由良のことは自分には関係ないと思いはじめている。


どうして?


そのことを心の中にいるもうひとりの自分に問いかけてもわからない。


わからないというよりも、考えたくない。


私は、もうなにも考えられないのかな。


そっと視線をそらしたそのとき、不意に近くから出された手が私の前髪をどけて額に当ててみせた。


その手が誰のものかは言わなくてもわかる。


「せ、先生……!」


いつの間にか距離を詰めた甲斐先生が熱の有無を調べているらしい。


だけど、これって……。


なにも考えられないかもしれないと思っていたのに、そう考えた瞬間、ボッと火がついたように顔が熱くなった。