誰も知らない彼女

そこから保健室に着くまでそんなに時間はかからなかった。


私の腕を軽く引っ張っていたネネがガラッと保健室のドアを開けると、ひとりの男性教師がびっくりした様子でこちらを見た。


この先生は学年の副担任の甲斐(かい)先生。


まだこの学校に来たばかりの新任の先生で、若くてカッコいいことから、女子生徒から絶大な人気を集めている。


新任で慣れない先生なら少しくらいおどおどしても仕方ないかもしれないが、彼はおどおどするどころかむしろ落ち着いた雰囲気を常に持っている。


「あっ、甲斐先生……」


まさか保健室に甲斐先生がいるとは思わなかったのか、びっくりして私の腕を離してしまうネネ。


私もびっくりしている。


今日は保健室の先生が休みではないから、てっきり先生だけいるものとばかり思っていたんだから。


「あれっ、君たち……どうしたの? もうすぐ授業がはじまる時間だよ?」


「わかってます。でも、この子が体調悪くて来たんです」


いまだに驚いた表情を浮かべる甲斐先生とは対照的に、ネネがすぐに表情を戻して私の肩をポンッと軽く叩いてみせた。


それと同時に私の体を軽く押し、甲斐先生との距離を縮めようとする。


足にそんなに力を入れなかったため、私の体は甲斐先生に近づく形になった。


「じゃあ甲斐先生、抹里ちゃんをよろしくお願いしますね」