誰も知らない彼女

それだけではわからないが、とくに異変を感じることはなかった。


最近自分で熱があるかどうかを体温計を使って調べているので、自分の熱の有無くらいはわかる。


これはないな。


頬が熱いわけではないし、ボーッとするわけでもない。


体温計で測っても、平熱あるかないかだと思う。


頬に触れた手で額を触れるけど、異常は感じられない。


頭上にいくつかのクエスチョンマークを浮かべる私に、ネネが私の腕を掴んでスッと立ちあがった。


グラッと視界が大きく揺れる感覚に襲われたものの、なんとか頭をおさえてネネと一緒に立ち上がる。


「ね、ネネちゃん……?」


「抹里ちゃん。本当に顔色悪いみたいだから、保健室に行こ。保健室に行くってことは先生に伝えておくからね」


いや、そういう問題ではないんだけど。


一瞬だけ立ちくらみに襲われたけど、それは急に立ちあがったせいだと思う。


言葉で引き止める前に、ネネが私の腕を引っ張って廊下に向かって歩きだした。


ネネの歩幅はそんなに大きくないはずなのに、私は小走りでついていくのがやっとだ。


軽やかに階段を下りていくネネに対して、私は鉛のような足を無理やり動かした感覚で下りている。