誰も知らない彼女

今ここで警察の人を呼ぶとなると、また騒ぎが大きくなる。


連続殺人事件を解決するどころか、さらに混乱を招くだけだ。


きっと警察の人は連続事件のことでこちらのことに手を差しのべてはくれないだろう。


じゃあ、私はどうすればいいの?


誰かに助けを求めることができないなら、いったいどうやって対処すればいいの?


頭から両手を離しながらゆっくりと歩き、すぐ近くに置いてあったドレッサーの目の前まで歩み寄る。


そのドレッサーにパジャマ姿の自分が映っただけなのに、鏡の中の私のうしろに人影のようななにかが見えた気がした。


「…………っ!」


はっと目を見開き、うしろのほうに目をやる。


視界に映るのは、いつも見る風景。


でもたしかに、鏡には人影のようなものがはっきりと映っていた。


なんで?


なんで誰もいないはずの部屋に人影が鏡の中に現れるの?


そう思うだけでぶるっと体が震える。


窓を開けているわけでもないのに寒気を感じた理由なんて、知らなくていい。


知ったら余計に寒さに襲われるだけ。


こくんとうなずきながら心の中のもうひとりの自分に言い聞かせる。


寒いのは室内温度が低いからだと思っておけば自然と震えはなくなる。


かすかに聞こえるインターホンの音を全力で振りきるように、私は布団の中に勢いよくもぐり込んだ。