とにかく、騒ぎを丸くおさめることが一番だ。


クラス全員が驚いている間に由良を再び睨み、ささやいた。


「もう誰かを傷つけたりしないで。私は以前の由良に戻ってほしいと思ってる。性格は変わらなくても、私に拳をぶつけてくれたときの、笑顔の由良が見たいんだよ」


この声が由良に直接届いたかどうかはわからない。


だけど、私は心から思っていることをちゃんと言葉にした。


それだけでも十分な成果だろう。


若葉を殺したいと言ったり他の子を足蹴にしたりクスクスと不気味に笑ったりする由良に言葉をぶつけただけでも、大きな成果につながったに違いない。


真っすぐに由良を見据える私とは対照的に、いまだに目をしばたたかせている由良。


私の言葉が届いているかわからない表情だ。


それでもいい。


今しなければならないことはもう済んだから。


あとは連続事件の犯人を見つけて、平和な日々を過ごしたいと願うだけ。


きっとわかるはずだ。


野々村さんと畠さんといっちゃんの彼氏だった広隆さんを死に追いやった人物が。


犯人を見つけるためにも、私は死ぬわけにはいかない。


それに、磐波さんが『死ぬな』と強く言ってくれたんだ。


磐波さんの言葉をムダにはさせない。


絶対に見つけてみせる。


そして、もう二度と誰かが死ぬようなことが起こらない平和な日常を取り戻すんだ。


こくんと力強くうなずいたと同時に、次の授業のはじまりを知らせるチャイムが鳴り響いた。