誰も知らない彼女

いくら頬を冷まそうとしても頬の温度が低くなることはなく、もともと自分の心の中にあった冷静さを失ってしまった。


どうしよう、頭が正常に働かない。


パニック状態におちいったとき、いったいどんな行動をすればいいんだろう。


テレビでいつの日か観ていた番組でそれの対処法を特集していたような気がするけど、いざ自分がそういう状態になると身につくのは焦りとマイナスな気持ちだけ。冷静さをたもてるわけがない。


自分を包み込む空気に息苦しさを感じて、気がつけば保健室を飛び出していた。


どうやって磐波さんから逃げたのかをもうひとりの自分に問いかけても、答えとなるものはひとつも返ってこないと思う。


とにかく冷静になりたかった。


頭と頬を冷やしたかった。


不意に視界に映った時計がまだ授業中だということを知らせても自分が落ち着く場所に着けるならどうなってもいいと思うくらい、冷静さというかけらをなくしていた。


階段を何回か上ったあと、急に足がもつれて教室の前の廊下にペタッと座り込んだ。


奥のほうから声が聞こえてきて落ち着かなくなるかもしれないけど、とりあえずここで自分を落ち着かせよう。


壁に背中を預け、天井に視線を向ける。


早く授業終わってくれないかな。


そうすれば、教室の中にいるであろうネネとえるが私の心をなぐさめてくれるから。