誰も知らない彼女


☆☆☆

いつの間にか保健室で眠っていたみたいで、目を開けると、視界に真っ白な天井が映った。


そうか。


保健室に来たあと、私は真っ先にベッドに入って寝ちゃったんだ。


そこからの意識や記憶はない。


なにか夢を見ていたというわけではないし、うなされたというわけでもないし。


また頭痛やめまいを起こさないようにゆっくり起きあがり、あたりを見渡す。


保健室に来たときにはいた保健室の先生の姿が見あたらないけど、代わりに誰かがいる気配がした。


視界には映っていないのに気配を感じるということは、本当に誰かがいるんだろう。


ベッドから降り、閉められたカーテンを勢いよく開ける。


シャッという音が耳に響き、視界の端にあらたに映った誰かのうしろ姿がびくっと震えた。


やっぱり誰かいた。


私に背を向けているその人物は、この学校の制服を着ていない、私服に身を包んだ男の人だった。


確信はないけど、誰なのかは推測できる。


「……磐波さん?」


「抹里ちゃん……」


まるで会いたくなかったかのような、気まずそうな表情を見せる磐波さん。


それもそうだ。


数日前、磐波さんに悠くんといるところを見られたから。


私も正直、ここで顔を合わせたくはなかった。


学校以外の場所で偶然会ってしまったのなら逃げることも隠れることも可能だったが、学校だと逃げても隠れても必ずどこかで捕まってしまう。


はぁ、と息が漏れる。