誰も知らない彼女

それらもすべて、私がこの世からいなくなったら消えていく。


ギュッと目をつぶりながらそんなことを考えていると、腕を握っている由良の手の力がだんだん強くなってきた。


ビリビリと電気のような痛みが体中に走っていくが、今はもう気にならなかった。


心の奥底まで響いてくる感じの由良の声が少しずつ小さくなっていくのを感じる。


自分が心の底から死にたいと思えば、たとえ嫌なことでも気にならなくなる。


もうこんな世の中、生きていたくない。


そう思ったときには由良の手を振り払って、教室から逃げるように全速力で走り去っていた。


気持ちがすぐ行動に移ったと感じた瞬間だ。


あまり使わない西側の階段の踊り場まで来たところで足がもつれ、その場にペタッと座り込んだ。


「はぁ……っ、はぁ……っ」


運動はあまりしないほうだが、なぜか疲れは感じなかった。


それでも呼吸が荒くなったのは、先ほど見た由良の表情のせいだと思う。


変わってしまった親友から距離をとろうと決心した瞬間から私は由良を裏切ったというのに、こんなにも罪の意識を感じなくなるのは、なんで?


連続事件をきっかけに由良の言動が変わっていったのはまぎれもない事実だが、それと同時に彼女から逃げる私に変化が起きているのも事実だ。


一緒にいた親友を見捨てたにもかかわらず、胸を撫でおろしてほっとしている私がいる。