生きた心地がしない。


死んだわけじゃないのに、死んだような気分を味わっている感じだ。


悠くんの話により磐波さんに恋をしていると気づかされた数日後のこの日、朝からつきたくもないため息をつきながら教室に入っていった。


今日も教壇近くで由良が数人のクラスメイトに足蹴にされている。


由良が嫌がらせを受けはじめた当初はその様子が気になってたまに目を向けたことがあったけど、今はもう気にならなくなってしまった。


確信はないが、これは慣れというものなのだろう。


手を差しのべることなくスタスタと自分の席に歩み寄る。


私が肩にかけていたカバンを机に置いたと同時に、先に来たらしいネネが慌てた様子でやってきた。


「ほっ。抹里ちゃん、来たんだ……」


視界に私の姿が映ったのを確認したあと、ひと息ついて安堵の表情を浮かべるネネ。


なにを考えていたんだろう。


ネネの表情を見る限り、よからぬことを考えていたのかもしれない。


なんて思いながらもネネに挨拶をする。


「おはよう、ネネちゃん」


ネネに声をかけた直後、あることに気づいた。


ネネといつも一緒にいるはずの秋帆の姿が見あたらない。


それに、秋帆とネネにくっついて行動していたはずのえるもいない。


普段ならネネは秋帆と一緒に教室に入ってきて、私のところに来るのに。


なぜか寒気がする。