誤解されてもおかしくはないけど、私と悠くんはいとこ同士であって恋人同士ではない。


だから私たちは運命の赤い糸では結ばれていないのだ。


私が誰と赤い糸で結ばれているのかなんて、今は考えている場合じゃない。


どうしたら磐波さんに誤解だと思わせるのだろう。


姿が見えなくなってしまった今、追いかけることができなくてその場に立ちつくす私に、悠くんがコソッと話しかけてきた。


「なぁ、抹里。俺たちを見てた男、誰?」


「えっ? あ、あぁ、あの人は……」


言いかけて口をつぐんだ。


なんて言えばいい?


知り合い? それとも……。


言おうとした言葉が出ないように、残っていたコーンをそのまま口に運んで入れる。


言わないんだと意識すれば言うことはないはずなのに、なにかを口にくわえなければ口を無意識に開けてしまいそうだったので、とっさに体が動いた。


コーンをくわえたまま黙っている私を見て、悠くんがニヤけそうになる口を手でおさえて、なにか思い出したような表情をした。


「……もしかしてその男、抹里の気になってるやつか?」


バレてしまった。


いや、悠くんに隠そうとしても、最初からこういう結果になっていたかもしれない。


昔から嘘がつけない素直なタイプだと言われた私が、悠くんを騙すことができるわけない。