しかし、そんなふたりの言葉など完全にスルーして由良は笑い続けた。


「はは〜。クラスのみんながいじめてばかりで朝丘を殺さないなら、私が朝丘を苦しめて殺そうっかな〜」


口は笑っているのに、目が笑っていない。


由良は本気でそんなことを言っているのだろうか。


たしかに若葉に嫌がらせをしようと計画して進んだのは由良だ。


私のスマホに使っていない番号を入れたという理由で若葉をターゲットにした。


でも、共犯の秋帆は若葉を殺すことを目的としなかった。


今の由良は若葉を殺そうとしている。


なんとか由良を止められないものか。


目に邪悪な色を浮かべながら微笑む由良の姿を見て、秋帆は顔を青ざめた。


「あんた怖いわよ。なんでそんな言葉を平気で言えるのよ……。朝丘だけじゃなくて、あんたまで狂ってるじゃない……」


秋帆の言葉に嘘はない。


本当に今の由良は怖い。


私だって、本当はこう言いたいよ。


どうして人前で言ってはいけないことを、そんな平気な顔で言えるの、と。


言いたい。言いたいのに。


どうして私は由良に言いたいことを言えずに黙っているのだろう。


いつの間にか作った握り拳にギュッと力がこもって切っていない爪が皮膚に食い込み、手のひらに痛みが走る。


心の中で思っていることが言えない自分が本当に情けない。


自分自身に不満をつのらせていくが、ネネの声で意識が一気に現実に引き戻される。