精神が不安定になっていても、若葉への悪口は止まらないようだ。


そのことになぜか安心している私がいる。


もうわけがわからない。


一時期、私は若葉を助けようと思っていたことがあった。


けれど、クラスメイトにすぐ囲まれて彼女と接する時間を奪われてしまった。


今はどう?


いくらでも若葉を助けるチャンスはあったはずなのに、若葉にきつい言葉を浴びせて以降は手を差しのべなくなった。


若葉がクラスメイトにいじめられているのがとてもいい気分だから?


それとも、またクラスメイトに囲まれて話せなくなるから?


ダメだ、頭がパンクしそう。


これ以上考えないほうがいいかもしれないな。


首を左右に振って、自分の席に座る。


焦る私など完全にスルーして、由良はまたヘラヘラと笑って私の前の席に座った。


「あはは、朝丘がいじめられてるの見るの最高〜。てかむしろ、朝丘を殺しちゃえばいいのに」


由良の声はそんなに大きくなかった。


なのに、すでに来ていた秋帆とネネは由良の声に素早く反応してこちらに駆け寄った。


「由良、あんた最近おかしすぎ。いくら朝丘のことが嫌いでも殺すのはどうかと思う」


「そうだよ、抹里ちゃんが引いてるじゃん。いいかげん目を覚ましたら?」


ふたりの言葉にトゲはなかったように思えた。


由良を止めたいという気持ちが出ている。


自分たちがいくら由良を避けていても、自分たちが止めなくてはならないと考えたのだろう。