そう考えるのもおかしくない。


もしそうだとしたら、たとえ被害者の首にひものような跡がついても犯人が持ち帰ってしまって、誰が殺したのかわからなくなる。


犯人はそれを考慮して、刃物を使わない殺人事件を起こした。


これで一歩、事件の解決に近づいたかもしれない。


もしこれが解決の糸口ではなくても、私にとっては重要な手がかりだ。


川西さんに会って、話ができてよかった。


ほっと胸を撫でおろしたと同時に、なにかに気づいたらしい川西さんが慌てた様子で立ち上がった。


「……あら、もうこんな時間! 外は真っ暗だろうし、せっかくだから車で送っていきましょうか?」


川西さんは壁にかけられた時計に視線を向けてびっくりしている。


ポケットに入れておいたスマホを確認すると、午後7時過ぎになっていた。


話に夢中になっていたせいか、こんな時間になったとは思ってもいなかった。


「いえ、大丈夫です。私の家、ここから歩いていける距離にあるので……」


「大丈夫じゃないでしょ! もしかしたらあなたもその犯人に襲われるかもしれないのよ? あなたが襲われてからじゃ遅いのよ!」


彼女の必死さがひしひしと伝わってくる。


息子を亡くした彼女だからこそ言える、いつわりのない言葉。


その言葉に、私は甘えることしかできなかった。


「じゃあ、お言葉に甘えて……」


私がそう言ったのを見て、川西さんは笑顔で対応してくれた。