ここまで聞こえるかどうかわからないくらい、小さな声。


だけど、私にははっきりとその言葉が聞こえた。


これには、驚きをあらわにするしかない。


「……ほ、本当ですか?」


「えぇ。ただ、犯人らしき人物を見たときは真夜中だったから、顔ははっきりと見えなかったけど」


彼女は犯人らしき人物を目撃していた。


だが、その犯人の顔は暗闇で見えなかった。


ならば犯人は、自分の顔が見えないようにするため、わざと夜になってから犯行におよんだということだろうか。


だとしても、いったいなぜ?


殺害計画をくわだてて、それをなんで人のいない真っ暗なところで実行したのだろう。


川西さんからそっと目をそらしてうーん、と考えるが、謎はますます深まっていくばかりだ。


これ以上犯人の行動について追求しても仕方ないので、次に気になっていたことを質問する。


「犯人らしき人物を目撃したときの状況を、詳しく説明してもらえませんか?」


さっきよりもよどみなくスラスラと言えた自分に心の中でびっくりするが、気づかないフリをする。


なぜか自分自身が冷静になっている。


目つきも、無意識に真剣なものになる。


私自身、人前でこんな真剣な表情をするのは、はじめてに近いかもしれない。


そんな私の表情を見て目を見開き、しばらく呆然とする川西さん。


しかし、真剣さが伝わったのか川西さんも真剣な眼差しで私を正面から見据える。


「いいわよ」


さっきよりもハキハキした口調でそう言ったあと、川西さんは説明をはじめた。