誰も知らない彼女

おそるおそる問いかけてすぐに口を閉じたあと、いっちゃんは雑木林のほうに視線を向けた。


その瞬間、いっちゃんが顔を両手で覆ってしゃがみ込んでしまう。


「うっ……うぅっ……」


雑木林を見ただけでしゃがみ込むのはどうして?


いきなりしゃがんでしまった彼女に疑問を抱くが、問い詰めたら彼女を苦しめることと同じことをしてしまうと思い、しばらく黙っておくことにした。


いっちゃんから目をそらし、そっと雑木林のほうに目を向ける。


数日前まであそこにはブルーシートがかかっていたのに、今はもうそれがなくなっている。


いつまでも遺棄された死体を放っておくわけにはいかないだろう。


誰も近寄らない雑木林に死体をそのまま放置したら、雑木林の奥に住んでいるであろうクマやイノシシなどの野生の獣に食いちぎられてしまうから。


もちろん私はあの雑木林に入ったことは一度もないけど、小さいころに両親や親戚にそう教えてもらったので、なにがあろうとも絶対に入らない。


逆にあそこに入った人は、どんな気持ちで入っていったのだろう。


雑木林で死体が見つかっていたなら、誰かがあそこまで呼びだして殺したか、先に殺しておいてその遺体を雑木林の中に遺棄したかの二択だと思う。


いや、その二択のどちらかに違いない。


犯人は絶対雑木林に入った。


もし違っていても、犯人に指示された人が遺棄したと考えてもいい。