「……も、もしもし?」


『抹里ちゃん? 俺、磐波だけど』


「磐波さん? こんな時間にいったいどうしたんですか?」


自分の名前を名乗る磐波さんの言葉を軽くスルーしてさっそく気になったことを尋ねるが、数秒経ってもなんの反応もない。


どうしたんだろう。


電話でこんなにためらうなんてはじめてだ。


彼の身の周りでなにが起こったのかはわからないけど、なにかが起こったのはたしかだ。


私が尋ねた数十秒後、ようやく磐波さんが声をあげた。


『……あのさ、落ち着いて聞いてくれる?』


「え? は、はい……」


ごくっと小さく唾を飲み込む。


『前に合コンしたとき、俺と一緒にいた男子ふたり……野々村と畠、いただろ?』


「あっ、はい……」


ふたりの名前を聞くのが久しぶりだから、忘れそうになっていた。


そのふたりの名前を出したということは、ふたりに関してのなにかなのだろうか。


そう思って首をかしげた直後。


『そのふたりが……じつは昨日から行方不明になってるんだ』


行方不明⁉︎ 野々村さんと畠さんが⁉︎


びっくりして、思わず叫んでしまいそうになるが、口を手でおさえてこらえる。