でも、クラスメイトが若葉に対して恐怖を抱くのも無理はない。


若葉が暴れる姿を見たとき、私も怖いと思った。


体育の授業で暴れていた人物と、ポーカーフェイスを装う人物が同一人物だと思えないのは当然だ。


そんな当たり前な意見を抱いているのは、私や一部のクラスメイトだけではなかった。


「怖っ。急に朝丘が怖くなったわ」


「私も……。朝丘さん、頭どうかしてるよ」


由良とえるは体育の授業以来、若葉に対する思いが変わったような言葉を口にするようになった。


ただ、若葉への嫌がらせの主犯格のひとりである秋帆は姿勢を変えなかった。


「キモい! あんた、マジ気持ち悪いんですけど〜」


と言って、虫でも見るかのような目を若葉に向けていた。


ネネといっちゃんは、由良とえるほどに恐怖を抱いたわけではないが、若葉が暴れて以来若葉を避けるようになった。


自分サイドの仲間が徐々に若葉に近づかなくなったことを悟った私だが、思うように体が動かない。


助けたいのに。


私は本気で若葉を助けたいと思っているのに……。


気持ちで一生懸命抵抗するが、体に鉛が入った感覚に襲われる。


自分も若葉が怖いと思っているせいか、体が言うことを聞いてくれない。