体育の授業のあと、若葉はしばらくして落ち着きを完全に取り戻したが、クラスメイトたちからの嫌がらせは続いていた。


教室から戻ってきた若葉を確認すると、ドアの近くにいた女子が足をちょっとだけ伸ばして若葉を派手に転ばせた。


さらにチョークの粉がたくさん付いた黒板消しを彼女の前でパンパンと叩くということもしていた。


嫌がらせがヒートアップしているにもかかわらず、若葉は暴れ狂ったのが嘘だったかのようにポーカーフェイスを貫きとおしていた。


それが若葉の反撃といえるのかどうかはわからないが、若葉の表情を見たクラスメイトの何人かは恐怖の目を向けていた。


「なんで? 体育館ではあんなに暴れてたのに、どうして落ち着いてるの……?」


「やばいって、朝丘若葉は狂ってるよ」


「マジ怖いわ。朝丘の精神が今どうなってるのかなんて知らないし知りたくもないな」


「気持ちわりぃな、ああいう朝丘若葉って」


「やばいよ、近づかないほうがいいよ」


コソコソと無表情の若葉に視線と言葉を浴びせるが、若葉が一向に表情を変える様子はまったくない。


体育の授業で若葉が暴れたが原因だったのか。


体育の授業で若葉がいきなり暴れたという噂が流れたせいか。