由良と秋帆の言葉で、ネネとえるといっちゃんがふたりに駆け寄る。


「おかえり〜」


「大丈夫だった?」


「朝丘、相当狂ってたよね」


まるでさっきまでの出来事がなにもなかったかのように、笑顔を向ける3人。


3人の由良と秋帆に向ける笑顔はものすごく怖いはずなのに、若葉の暴れ狂った姿を見たせいかあまり恐怖を感じなかった。


「いや〜、マジでやばかった。朝丘が私たちの姿見た瞬間に暴れたから。ねぇ、秋帆?」


「うん。思ったけど朝丘……最近様子が変だよね。突然狂ったのとなにか関係あるのかもね」


たしかにそうだ。


若葉が突然暴れたのは、最近若葉を襲ったなにかが関連している可能性がある。


嫌がらせで精神病を病んだとかではないよね。


若葉がそんな簡単に心が折れるような人間ではないと思う。


だからその可能性は低いといってもいい。


なんて考えていると、いきなり由良が私のほうに顔を向けた。


「ねぇ抹里、朝丘が私たちの姿見て暴れたとこ見た? やばかったよね〜」


由良の声で秋帆たちも笑いだした。


若葉のことを意地悪く笑うのはダメだよ。


そう言いたいのに、若葉を助けるような言葉がまったく出てこない。


思っていた言葉が出てこない代わりに、別の言葉を口にしていた。


「う、うん、相当やばかったね」


このときに感じた痛い視線に、私は笑いながら気づかないフリをしていた。