こんな都市伝説を試したくらいで…なにかが起こるはずない。


必死に自分に言い聞かせる。


「…さあ、ね…まあ…帰りましょうか」


恢斗は険しい表情をしたまま踵を返した。


それに続き皆も歩き出し、古びた立て看板をすっと通り過ぎた。


そっと振り向いた私の目に映る
蔦が絡みついたトンネル。


…もう気にするのはやめよう。


トンネルに不安を残したまま、
“なにも起こらなかった”という事にして


私達はそれぞれの家へと向かった。




5人と別れ、1人になり歩きながら考える。




なにもなかったんだよ。うん。


謎の足音は松林君だったし。


そう思ってるはずなのに後ろから不安が追ってくる気がしてぎゅっと耳を塞ぎ、家へと走る。







『もう逃がさないカラ……キャハハッ!』



…こんな少女の声が聞こえた気がするのは


きっと耳を塞いでるから風の音がそんなふうに聞こえるだけ。そう自己暗示する。






まさかこの日が5人…松林君を入れて6人が


笑える最後の日となるなんて




今は思いもしなかっただろう。



2000/8/3 0:48

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー