「は、はは……恢斗、大げさだよ。だって零時にふざけて入った人も居るんだろ?
なにも起こらねぇって……」
智弘の声に涙を浮かべた柚姫。
「そうだよね……?なにも起こらないよね……?」
震える柚姫の声に応じるかのように
その場に立ち尽くしていた私達の周りを
夜の冷たい風が取り囲んだ。
その風は心なしか、
私達を嘲笑っているかのようだった。
私はなにも言わなかった。
普通に考えればただの都市伝説だが…
小林君の事件もあって、皆
トンネルの噂に過敏になってるんだ。
それに……本当にただの都市伝説なのかな?
だったらなんでこんなに
不安になるんだろう……?
なんでこんなに怖いんだろう……?
「…そ、そうだな!それか時計がずれただけかもしれねぇし……
もう、帰ろうぜ!!なにもなかったんだよ」
ぐるぐると考えていた私は松林君の
言葉で我に返る。
早口でなにもなかったんだと話す松林君は
いつのまにか笑顔に戻っていた。
気にしていないようだが
冷や汗は彼の首筋から流れていた。
ふぅ、と息を浅く吐く。
その通りだ、と思った。