『あ、あぁ……魔莉乃、ちゃん……』
媛乃は私が読み進める事に
苦しみを増して
その両目からは
だんだんと熱い涙がとめどなく溢れ始めた。
読みながら私も
今までの恐怖や絶望、
皆との悲しい別れを思い出し
静かに泣いていた。
智弘も隣で目頭を押さえている。
この幽霊トンネル事件は
誰も悪くない。誰のせいでもない。
ただ人間の弱さが出ただけだ。
皆怖くて、苦しかった。
媛乃も魔莉乃も、紗希達も
皆恐怖に翻弄されていただけ。
魔莉乃は村の当主として
村を背負っていくという宿命の上で
結論を出しただけ。
媛乃だって
トンネルに捨てられていたというだけで
変な力を手にしてしまっただけ。
媛乃自身に罪はない。
ここ、魔莉乃村は
媛乃を犠牲にして安寧を取り戻した村。
まだ生きている住人達は
きっと死ぬまでこの事を忘れないだろう。
ーーーこの、30年前の悲しい事件を。
