媛乃は本気だ。
本気で澪夜との関係を絶たねば
私が殺される。
…この時きっと
恐怖の中で正常な判断が出来なく
なっていたんだと思う。
恐怖を言い訳にしているだけで本当に
私は心の醜い人なのかもしれないけど。
「わ、わかった…わ…」
だって私は、親友を見捨てたんだから。
裏切ったんだから。
『キャハハハ!!交渉成立ね。
…じゃあ、よろしくね?』
そういうと媛乃は泡のように消えていった。
そして。
「……いっ…」
隣から聞こえた媛乃ではない
声に肩をびく、と揺らしてしまう。
それは小さかったけれど隣にいる私には
聞こえた。
そっと隣を見ると
ファイルで指を切ったのだろう。
澪夜が指からぷっくりとした血を流し
痛そうに顔を顰めていた。
動いている、澪夜が。
周りを見渡すと皆も
ファイルをめくっている。
…時間が、動き始めた。
