ただ好きってその一言が言えればいいのに
こんなにも恥ずかしくて緊張する。
もう、恥ずかしくてなにも考えられない。
私に出来るのは精一杯思いを伝えるだけ。
「うざいって…迷惑だって思うかもしれない
けど…けど…」
「……」
智弘はじっと私の言葉の
続きを待ってくれている。
覚悟を決めて、私は大きく息を吸いこんで
智弘への気持ちを言葉にした。
「私ね、智弘のことがーーーっ!?」
きつく両手を握り、智弘に想いを伝える。
しかし言い終わるのと同時に
「…好きだ」
ふわっと、風が吹いた。
私の言葉と重ねるようにして
智弘の小さいけど、はっきりとした一言。
風を感じた途端
香るのはあの人のシトラスの香り。
熱を持っている頬と心は
シトラスの香りで余計に熱くなる。
私を包むのは智弘の、体温。
「お前が好きだ。……澪夜」
