今度は、
莉香へメールを打ち終わったらしい
恢斗がいつのまにか
倒れている私を覗き込んでいた姿勢から
立ち上がっていた。
「どうした?」
不可解な恢斗の行動に問いを投げかける
智弘に、
恢斗はいつもの無表情で
「…昼食でしたら私に任せてください」
なんて言いながら
すたすたと私の家のキッチンへ歩いて
いってしまった。
「え、あ、ちょっ」
私がこの家の主なのに
許可取らずにキッチンへ向かう恢斗に
怒りよりも驚きが大きかった。
「恢斗、料理できんのか…?
不安しかないな」
「同感だよ…」
真面目だけどどこか抜けている
恢斗だから心配でしかない。
しかもここ、私の家だし。
私達の心配をよそに
なにやらキッチンで恢斗が
いそいそと作業に取り掛かり始めた。
その様子を横目に、智弘をちらっと
盗み見る。
私は密かに智弘と2人きりで
話せていることに
嬉しさを感じていた。
漏れそうになるにやけを我慢して
真顔を貫く私。
すると恢斗がキッチンから私達の元へ
大声でこう言った。
「智弘さん、今日は澪夜さんの家に
泊まってくださいね?」
