こうして魔莉乃村は
媛乃という1人の尊い命を犠牲にして


安寧を取り戻した。


思えばこの決断は
間違っていたのかもしれない。


それでも私達は醜いから
これで平和が訪れたと心のどこかでは
安堵していた。


媛乃を失った悲しみよりも
そっちの方が大きい事に


自分の性格の愚かさを実感した。


そうして幕を閉じた魔莉乃村の
トンネルの事件。


終わったと思っていた。


それなのに……


それ、なのに……!


それからすぐにコンクリートで埋められた現場に立ち入った高校生が殺された事件が
起こった。


媛乃の怨念という噂が立ち込めて
村はまた雰囲気を悪くした。


それだけならまだ良かった……


過去はもう忘れようと
前向きに生き始めた私。


数年後、私は結婚した。


でも名字は変えなかった。
名字でも、罪を犯した私の名前は


変えちゃダメな気がしたから。


「神咲魔莉乃」という名前を


深く深く刻まなきゃダメな気がしたから。