「莉香さんのあの態度はなんですか?
今1人で行動するのは危険だと思いますが」
恢斗はあくまでいつもの
冷静な声音だったけど
その言葉から
“追いかけろ”ってメッセージが伝わってくる。
「わ、わかんない……」
パッと信号が青になり
行き交っていた車は止まり莉香が足を進めることを許している。
莉香を今1人にしたら危ない。
追いかけなきゃ。
でもまた拒絶されたら…?
嫌われるんじゃないかって
怖くて追いかけられない。
救いを求めるように恢斗に視線を送ると
なぜか真顔でグッと親指を立てられた。
…えっ
「…ぷっ」
…な、なにそれ!
真面目な顔をしたままそのポーズは
ギャップがありすぎて異様だ。
耐えきれなくて笑ってしまい恢斗が
不思議そうな顔をした。
お陰様で心配や不安も吹き飛んでしまった。
その様子を私と同じように笑いながら
智弘も私に恢斗の真似をして親指を立てる。
「行ってこいよ、澪夜」
優しい智弘の軽い言葉と恢斗の謎のポーズに
背中を押されて笑いながら
「…う、うん!」
小さな莉香の背中を追って駆け出した。
