その血を眺めながら
柚姫の血塗れの姿を思い出さないって決めたのに思い出してしまう。


死ぬ時はこれよりも
痛いんだろうな。


血も、これよりいっぱい流れるんだろうな。


柚姫は死ぬ時どう感じたのだろう。


それにどうしてトンネルに自ら行ってしまうの?


松林君の時の夢が真実なら
操られているのかもしれない。


松林君は苦しみながらトンネルへ向かって
いた夢を見たから。


それで媛乃に体をバラバラにして
殺されるのだろう。


痛みはあるのに逃げられないなんて
そんな、辛すぎる……


「……澪夜!」


「わっ」


指先を眺めていた私に小さな莉香の
鋭い声がかかった。


「なに?」


我に返り、流れ落ちそうな血を
舌で舐める。


鉄っぽい味が口いっぱいに広がった。


「なに?じゃないわよ。遊びじゃないんだからしっかりやってよね」


「……えっ、あ、ごめん…」