初めて見る女の人の姿は、
とにかく綺麗だった。


白いワンピースを纏い、
どこからか吹いた風に長い髪の毛を
靡かせていて。


伏せられた睫毛は憂いを感じさせるが
その瞳は固い決意に染まっていた。


未だにその姿をちりちりと
光の粒子のようなものが舞っていて。


そんな女の人の姿に、衝撃を感じた。


この人を、私は多分知っている。


知っているというか…毎日目にしてるはずの
顔だった。


信じられなくて、でも口にしてみる。


「あ……ぁ…お、お母さん……?」


声が、震えた。


その顔は毎日絶えない笑顔で
黒い額の中で笑っていた顔そのものだった。


この人が…


神咲魔莉乃……ううん、お母さん……


呼びかけに応えるかのようにふわっと
笑みを浮かべ


『…大きくなったわね、澪夜……』


優しくそう言って微笑む魔莉乃。
お母さん、と呼ぶべきなんだろうけど


今は呪いのこともあるし…


ややこしくなるから魔莉乃と呼ぼう。


生まれてすぐいなくなってしまったから
さすがに感動の涙は流れなかったけど


それでもその笑顔は


私の胸の中を温かくした。