ぼっちの俺に、青春ラブコメは難題すぎた。

リビングから俺を出迎える為に出てきた我が家の天使こと姫乃は、俺の姿を見るやお帰りなさいの言葉よりも先にこう言う。




「……今すぐ病院に行かないと!急いで保険証と診察券持って来るから聖夜は玄関で待ってて!!」


慌ててリビングに戻ろうとする姫乃の腕を掴んで俺は姫乃を引き止める。



「……大丈夫だ、心配しなくても大した怪我じゃない」


姫乃は、自分を引き止める俺の言っていることが理解できないと言いたげに困っているような、戸惑っているような顔をして俺を見る。


……可愛い奴だ。



自慢の妹の頭の中心を優しく撫でて、姫乃にこれ以上要らぬ心配をかけない為に俺は笑顔で言う。




「……大丈夫だから心配するなあ。お兄ちゃん、姫乃の顔を見たら元気出てきたからさ」



「……聖夜」


姫乃は、目を細めて頬を少し緩ませ微笑みを浮かべて小さな声で呟く。



うんうん。

流石、我が自慢の妹だ。

俺の気持ち悪い発言にも全く動じる事がないなんて、器が違うな。



「……姫乃、お前、凄いな。実の妹じゃなかったら、俺の嫁にしたいくらいだ」



「それは嫌っ!聖夜と兄妹じゃなかったら、絶対に聖夜となんか姫乃関わりたくないもん」



……即答された上に否定されて、拒絶までされた。


それでも俺は、姫乃のどストレートのきつい言葉にも笑顔を絶やすことはない。



……これは、あくまでも自分の妹だから笑顔で済ませられる。


今の姫乃の言葉をもしも他人から言われていたら、俺は自分が想像しているよりも傷ついていたことだろう。


普段から他人を拒み続けて、常に離れた所から他人の行動や言動を見てはいるけど、他人から拒絶されるのはやはり傷つくものだ。



「……悪い。今のは、あくまでも冗談だから深く考えないでくれ」


姫乃の頭から自分の手を離して小さな声で謝る。


目線を下に落として笑ったあと、俯いて俺は階段を上っていく。



「……聖夜……?」


聖夜の背後で、姫乃が小さな声で呟く。