ぼっちの俺に、青春ラブコメは難題すぎた。

「……まあ、部員が居ようと居なかろうと俺がこの部活に入部することには変わりはありませんがね」


……全く。

俺という男はつくづく素直じゃない人間だ。

人助けなんて自分の為にもならないことをしたくもないくせに自分の目の前で困り嘆いてる人を見捨てることもできないなんて。


俺の偽善者にも程がある。


この世に真の善人な人間なんて居はしない。
誰しも必ず善をすれば御返しを心のどこかでは望んでいる。
そして最後は結局他人よりも自分自身が大切になる。
自分の事しか考えられなくなってしまうものだ。

そんな事は百も承知だ。


人間はいつも自分勝手。


俺もその人間の一人だ。




「……失礼します。すいません、今日は日直で部活に来るのが遅れてしまいました。あの、先生、その方は?」


遅刻したことを先生に謝罪したかと思えば尽かさず俺の存在に気がつくとはなかなかやるな。

あ、そうか。

普段からこの部室に先生くらいしかいないからいないはずの存在に気づいた程度に過ぎないのか。
まあ、どうでもいいけど。



俺は声の聞こえた教室の扉に目を向けることなく目線を下に落として床を見る。

制服のズボンのポケットに腕を入れて猫背のまま俯く。



「彼は、倉根聖夜。この旧文芸部の新たな部員だ」

豊島先生は明るい声で俺をその娘に紹介する。


……旧文芸部ってことは今はここは何部なんだ?
部活動を行われているということは部の名前もあるのが当たり前なわけだ。

まさか、旧文芸部というのがこの部活の正式名なんて馬鹿げた事言わないよな。



「……あ、どうも。先ほど先生からご紹介のされた倉根聖夜です。挨拶の前に聞きたいことがあるんですが豊島先生、もしかしてこの部の名前って旧文芸部なんて言いませんよね?」



……あり得ない事だ。