私のファン、だとか。

ストーカー、だとか。

人を殺した、だとか。

心臓を食べる、だとか。

未来からの刺客、だとか。


どれもこれもデタラメのように聞こえて本当のことのようにも聞こえる。

今日、この日に、何を思って私に声をかけ、何を思って電車に座っているのか。




初対面だと言うのにも関わらず、いきなり私の名前を読んで来た時には、この人頭は大丈夫なのか…と思ってしまったけれど、不思議なことに今はこんなにも馴染んでいる。

ボックス席に向かい合わせで座ることにも違和感がなくなって。

時折見せる儚げな表情に、引き寄せられるものが、ある。






「……慰謝と鼓舞。それから…諦めが悪いんだ、俺って」

「…え、」

「本懐を、遂げたかった」


クリアな低音ボイスが、私の鼓膜を小さく揺らした。







「俺がこの電車に、────乗ってる理由」



困ったように眉を下げて微笑を浮かべているハルナさんは、固唾を飲んで見つめる私とようやく視線を絡めると、






「ばぁちゃーん、まだぁ?」

「もうすぐ座れっかんねえ、ああ、ほら、あそこなら二人座れんべ」




申し訳なさそうに「すみませんねえ。ここ、空いてっかねえー?」と声がかかる。

東武金崎駅を出発してまもなく、小さい子どもと老婦人がせかせかと隣に乗車して来た。